守りから来る「噛み」について
皆さんこんにちは。犬と人の共通言語の伝道師、トリマーでドッグトレーナーの原口です。 今回は「守りから来る噛み」についてお話ししたいと思います。
一番わかりやすいのは、やっぱり食べ物ですよね。 愛犬がご飯を食べている時に、ボロボロってお皿からこぼれてしまった。飼い主さんが「落ちてるよー」ってお皿に戻そうとした。よくあるシチュエーションだと思うんですけど、戻そうとした時に「うー」って唸られたり、噛まれたりっていうことは、結構たびたびよく起こる事件ではあります。
もともと犬には「所有欲」というものがありまして、これは生きる上で必要なことなんです。 例えば野生や群れで生きていたとして、強い個体に自分が獲った獲物を獲られちゃったら、飢えて死んじゃいますよね。なので、目の前にある大事なものを獲られるということは、犬にとっては絶対に嫌なことなんです。
飼い主さんからすると、「私がこのご飯を買ってきて、お皿に移して、どうぞってあげてるのに、私が獲るわけないじゃん!」って思うんですけど、その背景は犬には関係ないんですね。「たった今、獲られるかも!」と思ったら、とっさに守ろうという行動が出てしまいます。
問題行動への対処法:信頼関係の構築
ではどうするのかと言いますと、まずは一番最初にやるべきことは「食べ物を食べてる時に手を出さない」ということですね。そういうシチュエーションを作らないようにします。
その間に、「急いで食べたり必死に守らなくても、誰も取らないよ」「ちゃんといつでももらえるよ」という信頼関係を築いていきます。 どうやって築くのかというと、基礎トレーニングですね。
トレーニングをしながら、こちらがして欲しいことをしてくれた瞬間、例えばお座りをしてくれた時にお尻が床についた瞬間に「よし!」と言って、ピンポイントでその行動を褒めて伸ばしていきます。 そうすると犬は、「これがいいことなんだ!」「この人の言うことを聞いてたら楽しい!」というマインドになっていきます。自分がしたことに対してピンポイントで褒められて、ちゃんとおやつや言葉、一緒に遊ぶといった「報酬」がもらえるからです。
これをやっていくうちに、人間と一緒に何かをすることが楽しい、一緒にいたいっていうふうになってくると、今度はこちらがしてほしくない行動をした時には「報酬がもらえない」という経験をして、徐々に信頼関係を作っていきます。
この「もらえない」という合図(ノーリワードマーク)をあえて練習する方法もあります。これはワンちゃんのキャラクターにもよるので、絶対やったほうがいいというわけではなく、個性を見てやってあげるんですけど、分かりやすく言うと「お預けの待て」のようなものです。「動いたら食べられないよ、ちゃんと待ってたら食べていいよ」というのを、合図を交えて練習したりします。
具体的な事例とエスカレーション
実際に犬の保育園に来ていた子で、そういう関係性がお家でなかなか構築できていなくて、飼い主さんが噛まれてしまってご相談に来られたケースがありました。 その子は、おトイレをしたのでトイレシーツを交換しようとすると、シーツを持って行っちゃうんですね。それで「返して」って取り返そうとすると、「うー」って唸って手を噛んでくるという子でした。
こういうのって、最初はほんの些細な「ご飯を食べている時に手を出した」とか、そういうことから始まって、どんどんエスカレートしてくるんですよね。 日頃もっとかまってもらいたい、自分を見てもらいたいという時に、人間の大事なものを持っていくと「返して」って注目してもらえる。だけど取られたくないから噛む……となって、どんどんエスカレートし、最初に何をやりたかったのか本人もわかんなくなっちゃってる、ということが結構あります。